「ハイジ~!」と叫びたくなる村(アルティン・アラシャン)

次の目的地「カラコル」までは「イシク・クル湖」に添うようにして作られた道をマルシュルートカ(乗り合いバン)で走る。
イシク・クル湖はキルギスの東、標高1600mほどの高地にある。琵琶湖の9倍ほどの大きさで、「中央アジアの真珠」とも言われる美しい湖。
この湖には色々と謎があり、まず水温が低いにも関わらず冬でも湖面が凍らない。はっきりした理由が未だ解明されていないが、地下から温泉が湧いているという説が有力らしい。
そして湖の底には集落が水没していて、数多くの遺跡も発見されている。湖の底に眠る村が、なぜ水没してしまったのか、未だにその謎は解明されていない。
う~ん、何だかロマンを感じる湖だ。
ビシュケク方面からは湖の北、もしくは南を通る2つのルートがある。北側の方が景色がいいと聞いていたが、南側のクズル・トゥー村からカラコルまでの車窓からの景色も充分素晴らしかった。
イシク・クル湖の青さは一色ではない。透き通る水色、深いコバルトブルー、更にそこに空の青さも加わる。一言「青」といっても、本当に色んな「青」があるんだなぁーとしみじみと思った。湖の反対側を見ると、緑の草原・畑に、菜の花や白やピンクの草花が見え隠れする。その向こうにまだ茶色い山、その更に向こうにはまだ雪を被った山々が神々しくそびえている。
しばし美しい景色に見とれながらも目的地「カラコル」に到着。カラコルは標高1,720mの高原都市。ビシュケクから来ると涼しく、丁度良い気候。
そしてここへ来た理由は、何と「トレッキング」をするため。あれほどネパールで「トレッキングはもう暫くいい!」と言っていたにも関わらず、半年過ぎた今早くもそのしんどさを忘れてしまった単細胞な私。だってね、キルギスの観光は「トレッキング」がメインらしくて、それ以外特に興味をそそるものも無かったんよね。それに1泊2日で帰ってこれるというお手軽さもいい。
そういうわけで、カラコルに到着した翌日に早速「アルティン・アラシャン」へ。アルティン・アラシャンの標高は2,200mくらい、約6時間前後で着くらしい。
市内からマルシュルートカで登山道近くまで行き、そこからてくてくと歩く。マルシュルートカを降りた時点で既にきれいな山脈が見えて景色がいい。
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事前に宿のスタッフにルートを聞くと、「川沿いの1本道だから迷うことはないよ!」と言われたものの、しょっぱなで道を間違う方向音痴・・・というよりも本当にどうかしているとしか思えない私。
マルシュルートカを降りて15分くらい歩いたところで私が間違った道↓
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ここで道を間違う人なんて私ぐらいだろうけど、一応写真をUPしておこう・・・。
川に沿った道は明らかに左側なのに、何を思ったか右側の道へ行った。しかも柵があるのに柵まで越えて。本当にどうかしているとしか思えない・・・。暫く歩いて川に離れていることに気づいてまた戻ってきた。
それ以降は分かれ道はなく、ずっと川に沿って歩く。
川は雪解け水で増水していて、泥を巻き込みながらゴウゴウと流れている。途中「あ、道が川から離れたけど大丈夫かな?」と思うものの、遠くなっても川の音はしっかり聞こえるので安心出来た。
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とにかく針葉樹が美しい。
「針葉樹」という言葉を作った人は凄いなぁと思うほど、ここにある木々は全て空を刺すかのようにピンと尖っている。こういった杉の木のある山をどんどん歩いて行く。遠くには雪の残る山脈も見える。
途中見かけた紫色の変わった草花。
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暫く歩くと、遠くから羊の声が近づいてきた。
「メェー!メェー!メェー!」
思ったよりも数が多くて笑ってしまった。
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みんなモコモコしていてかわいい。
何頭かの羊がなぜかじぃ~っと私の方を見ていく。羊達にも「こいつぁヨソモノだな」というのが分かるのだろうか。
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時々馬に乗った地元の人達ともすれ違う。アルティン・アラシャンまでの道はジープも通れるため、ジープを持っている村人もいるけど、普通に馬を移動手段として使っている人達もいる。キルギスの男性(主におじいさん)はキルギスの伝統的な民族帽を被っている人が多い。白いフェルト地に黒の糸で模様が描かれていて、黒いつば。バケツのような形で普通の帽子より高さがあり、被るというより頭に乗っているという感じ。そういう民族帽を被って、馬にまたがって颯爽と走っていく姿は非常に格好良く見えた。
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沢山咲いていた青い小花。
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約6時間という情報だったけど、5時間で着いた。(途中までマルシュで来れたから?)比較的なだらかな道が続き、登りでも「あー!これ以上はしんどい!」というところで緩やかになったり。急な登りが続く場所はそれほど無かったので、思ったより楽であっという間に到着という感じ。ネパールで鍛えられたのかも?まぁ2,200mなので、酸素が薄いと感じることも無かった。
↓アルティン・アラシャン。
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遠くで見ると「村あるの?」という感じだけど川沿いにぽつぽつ民家(兼宿泊施設)がある。(この時はあまりにも田舎すぎると思ってこれが最終目的地だと気づいていなかった。)
まるでハイジの世界に迷い込んだよう。何とまぁファンタジックな場所、としばし見とれてしまった。
しかしカメラの調子が悪いので、写真を撮るのにもいちいち時間がかかって仕方無い。(オートで撮れない&明るい場所なのにISOが勝手に上がる)まぁ完全に壊れていないだけまだマシなのだけど、どんどん写真の数が減ってきてしまった。でもこうしてブログを書いていると、ブログを始めた当初は写真も少なかったので、何だか初心に戻ったような気分である意味良かったかも。
写真が少ないと文章で書きたいことが増える。
そもそも文章を書く方が好きな私にはこの方が合っているのかも。
けど、人物を撮りにくいため、この時も村の人の写真を一枚も撮ってなかったことに後で気づいて少し後悔;
近くまで行くと村の全貌を書いた黄色い小さな看板があり、それを見る限り宿が4軒。あとは何も無い。
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手前の緑の屋根の家がこの村で一番大きな、そして値段も一番高い宿。白いのはユルタでこの中でも宿泊可能。
思ったより体力も余っていたため、宿4軒とも値段を聞いてまわった。立地的には橋を渡った所にある4軒目の宿が良かったんだけどなぁ~。少し小高い場所にあって、ブランコがある。ユルタにも泊まれるから、友達何人かで行くなら楽しそう!
ユルタ↓
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ユルタの中↓
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意外と快適そう!こういう時友達と来れたら楽しいだろうな~と思ってしまう一人旅の辛さ;
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結局他の宿に比べて圧倒的に安かった、手前から2軒目の宿に決定!
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う~ん、のどか。
クララになった気分で「ハイジ~!」と叫びたくなるのは私だけ?
安い分設備は他の宿に比べてそれなりだけど、変に小綺麗なよりもこの山小屋的雰囲気の方が私は好き。


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ウェルカムティー&パン(ジャム付き)を出してくれた♪
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頼めばいつでも無料で紅茶を作ってくれる。
部屋は2階にあり、完全に屋根裏っぽい場所。
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でもハイジ、窓からの景色がすごくステキよ!
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まぁハイジはこんな景色見慣れてるか;
ほらハイジ、ドアの取っ手も流木っぽくてステキよ!


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まぁカギは無いけどね!
↓宿のまわり。
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アルティン・アラシャンには温泉がある。入湯料は200ソム(約320円)。水着着用。
私は結局入っていないが、後日入ったタカさんによると「お湯はきれいだけど少しぬるめ」らしい。川沿いの露天風呂なら無料ということで、宿のおじさんに場所を聞くと、
「近い方の温泉はぬるくてあまり綺麗じゃない。先週私が作った露天風呂があるからそっちに行きなさい!お湯もすごくきれいであったかいよ!」
と言うものだから、そちらへ行ってみることに。距離は400mくらいと言ってたけど、もっとあったと思う・・・。「とにかくまっすぐ行け」というおじさんの言葉を信じて獣道を歩くも、何度も「間違ってるんじゃ・・・」と引き返しそうになった。木々が深くなりいよいよ引き返そうとした時に、丁度向かいから欧米人が歩いて来たので、何とか引き返さずにすんだ。宿から20分くらい歩いたかな?道も結構滑りそうで危ない。
何とか到着した、おじさんが作ったカエルの温泉。
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その向こうにあるもう一つの温泉。
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川沿いギリギリにあって、よじ登って入る。水着必須だけど、私が来てから帰るまでは誰も来なかった。
ただおじさんは「Very clean」と言っていたけど、お世辞にも「Very clean」ではなかった。何か色々浮いていて、底には泥が溜まっている。一応入ったものの、髪まではつけなかった。(その後洗い直さないといけなさそうだったから)そしてぬるい・・・。湯口から出るお湯は普通に温かいため、湯口に必死に体を近づけて温まった。これは濡れたまま帰ると風邪をひくと思い、人が来ないことを祈りながらストールを巻いて着替る。(もちろん更衣室は無い)天気はいいけど標が高いせいで涼しい。寒くなるかな~と心配したけど、さすがの温泉効果か寒いと感じることは無く、むしろ宿に着く頃にはじんわり汗をかいていた。汗を流した意味が無い;
帰り道。
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黄色と白の草花が咲いててきれい。
しかし素足にクロックスで行ったため、変な虫に刺された場所が1週間くらい痒かった。
一軒目の宿の横にある小川には小さな水車が設置されている。その近くでおばあさんが何かの肉を洗っていた。肉も洗うのか~と思いながら、私も川の水を触ってみると氷水のように冷たかった。夏になるともっと水温は上がるのかなぁ・・・。
宿に戻ったものの、本当にやることも無いので宿の前の草原でハーモニカを練習したり、歌を歌ったり本を読んだり。一通り飽きたところで久々に自撮りでも・・・。
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遠くに行きすぎた。


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こんなもんか。
ちょっと肌寒くなってきたところで宿に戻って本を読みつつ仮眠。部屋には電気無く、充電する場所も無いので、パソコンも持ってきていない。基本的には電子機器を持たない旅をしたいけど、今の国際情勢を考えるとそうも言っていられないし。久々に本当にゆったりした時間を過ごせた気がする。
1時間くらい寝たのかな?急に部屋の扉が開いて現地人の女性が入ってきた。(部屋にカギがついていない)女性は「イズビニーチェ!(ごめんなさい)」と言ってすぐ出て行った。カギが無く、自前のカギをつけられる場所も無いので仕方無いと思い、扉の前にバックパックを置いて対処。と、また数分後に1人、更にまた数分後に1人、と扉を開けては出て行く。いい加減頭にきてオーナーに何とかしてくれと言いに行こうと1階に降りると、
「ハ~イイ!!!」


「イエ~~ッッ!!!」
1階の共同スペースがいつの間にかダンスフロアになっていた。
かなりテンションの高い音楽を流しながら、お酒を片手に踊っているキルギス人と見られる男女が10人弱。
その内の恰幅のいい女性1人が、私を見るなり手招きして「飲みなさい!」という風にカップにウォッカを並々と注ぐ。ま、まぁこんなところで睡眠薬強盗なんて無いしね・・・と、遠慮なく頂く。お酒とこの場の楽しい雰囲気で当然さっきのイラつきはサッとどこかへ消えてしまった。その後もやれビール、やれウォッカ、と飲まされ、ものの数十分でベロベロになってしまった。そもそも私はビール1杯で酔える省エネタイプ。お酒は好きだけど、強くない。
私を誘ってくれた女性にウォッカをショットで一気飲みさせられた時点で一旦部屋に引き下がる。とりあえずこれ以上は危ないのと、部屋に電気が無いから日が明るい内に色々やっておきたいことをやっておかないと、と思ったからだ。部屋に戻るとまだ夕方の7時。キルギスの日は長いので、まだまだ外は普通に明るい。
30分後くらいに「そろそろ夕飯出来たかな~?」と1階に降りると、まだ数人踊っている中、長椅子で寝ている人1人、なぜか泣いている人1人、そしてさっき私を誘ってくれた女性は完全にグロッキー状態になっていた。そりゃああんな飲み方してたらそうなるわな・・・。
男性の1人が、「彼女はロシア人、彼はカザフスタン人、彼はキルギス人・・・」と紹介してくれたので、一体どういう集まりなのか不思議に思って後で宿のオーナーに聞いてみると、全員オーナーの友達(とその家族)だった。しかも全員キルギス人。大して面白くもない冗談を・・・。ラマダン中の今は長期休暇を取る人も多いらしく、みんなで休みを合わせてビシュケクから遊びに来たらしい。
この日の夕食。
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ロシアの伝統料理「ボルシチ」。
豪勢とは言えないし肉は入ってなかったけど、野菜たっぷりで美味しかった。思わずおかわりしてしまった。
宿のおじいさん(オーナー)とその友達数人と一緒にご飯を食べ、食べ終わった後私は紅茶、他の女性達はコーヒーを頼んだのだけど、そのコーヒーを飲み終わった女性が真剣にカップの中を覗き込んでいる。
英語が話せるのはおじいさんだけなので、何をしているのか聞くと「コーヒーで占いをするんだ。飲み終わったコーヒーのカップの底に残る残りカスで、恋愛とか仕事とかのことを占うんだよ」と言う。
女性の1人がカップの中を見て「きゃ~!」と盛り上がっていたので、見せてもらうとハートっぽい形が。「これは恋愛が上手くいくってことだよ。女性はいつもこんなのを見て楽しんでるんだ。」と、呆れ顔で言うおじいさん。でも私は分かる。女性が占い好きなのは万国共通なんだよね。他にもドラゴンや橋など、見える模様によってそれぞれ意味があるらしい。
更にお酒を勧められたものの、グロッキーな女性を横目で見ながら部屋へと戻る。
が、もちろんこの人達の宴は留まることを知らず夜中まで続いた・・・。多分同窓会的なものだったのだろう。
翌朝。
部屋を出て1階に降りる。
「ハ~イ!!ズコ~!!!」
ズコー?
ズコーって何?と聞くとどうやら私の名前を呼びたかったらしい。私の名前はシホ。そんなおちゃらけた名前ではない。一応訂正して、周りを見ると案の定グロッキーな方数名。しかしそのしんどそうにしている女性に対し、隣りの女性が「ほら、これを飲むと楽になるから」といった様子で勧めているのはまさかのウォッカ。もちろん原液。「迎え酒!迎え酒!」といったテンションではなく、あくまで真剣に。しかもそれを勧められた女性は「ありがとう」とウォッカをショットで一気飲み。何?この人達にとってウォッカって水なの?
理解できない光景を目の当たりにしつつも、持参したパンで朝食とる私。
が、結局その人達から余ったパスタとチャイも頂いた。
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これはロシアを含むこの辺り一体で使われている「サモワール」というポット。
二重構造になっていて、真ん中に円柱状の穴があり、そこに燃料となる木炭などを入れて燃やし、外側に水を入れてお湯を沸かす。これはごくシンプルなものだけど、ビシュケクのショッピングセンター等ではイラストの描かれた可愛いものもある。
クズル・トゥー村のおばあちゃん同様、右のティーポットで濃い目の紅茶をつくり、サモワールで沸かしたお湯とミルクで割って、ミルクティーをつくってくれた。
ゆっくりと食事をし、みんなにお礼を言ってアルティン・アラシャンを後に。
本当に宿以外に何も無い場所だけど、テントやキャンプグッズを持ってれば何泊かしたと思う。ネパールのエベレスト街道も良かったけど、ここはまた全く違った良さがある。
帰り道、何度も振り返ってしまった。
それくらい純粋で素朴な美しい村だった。
リアルタイムではオシュからタジキスタンに向けて出発。
ネット環境ないので暫くブログ滞ります・・・(;´∀`)

カラコルからアルティン・アラシャンへの行き方

①カラコルから登山道まで
「Hostel Nice(MAPS.MEで検索可能)」近くの交差点から350番のマルシュルートカ(約30分に1本)
カラコル8:05発~登山道8:30着 約25分・30ソム
※350番の色付きマルシュ(緑や青)は登山道手前の村止まりのよう。村までは15ソムでそこから乗り換えることも出来るけど、白色マルシュを待った方が無難。
②登山道からアルティン・アラシャン
登山道8:30発~アルティン・アラシャン13:30着 約5時間
1時間に1回くらい休憩。アップダウンはそんなにないので帰りもさほど時間は変わらず30分早いくらいだった。

アルティン・アラシャンの安宿

アルティンアラシャンには民家兼宿が4軒ある。もちろんWIFIは無し。シャワー・電気・充電場所が無い場合が多い。
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2軒目の宿
1泊250ソム・夕食200ソム
WIFI、シャワー、電気無し。4軒聞いた中で一番安かった。オーナーのおじいちゃんも親切だったのでおすすめ。
(2016.6.10~1泊)
その他の宿の値段(1人の場合。時期によって違うかも)
1軒目:600ソム+夕食300ソム
3軒目(橋の手前):700ソム(1泊+夕食+有料温泉)
4軒目(橋を渡った所):500ソム+夕食300ソム・ユルタ泊も同料金。
※有料温泉はどの宿でも200ソムらしい。

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