2020年10月3~4日の2日間、香川県高松市にて「瀬戸内アートブックフェア2020(SETOUCHI ART BOOK FAIR)」が開催されました。これは瀬戸内国際芸術祭 実行委員会が主催する本のイベントで、前回は去年・2019年の瀬戸芸のオフィシャルイベントとして開催されました。
既に終了したイベントですが、凄く楽しかったのでレポートします。来年2021年も開催されそうなので、来場される方のご参考になればいいかと。
瀬戸内アートブックフェア(SETOUCHI ART BOOK FAIR)とは
瀬戸内アートブックフェアとは、全国選りすぐりの書店や出版社が高松・玉藻公園に集まり、本の展示販売やトークライブを開催するイベントです。2019年は飲食店や国外の出版社も集まっていましたが、今回はコロナの影響で規模が縮小されたため、それらはありませんでした。
事前に国内外からZINE(ジン)を募集し、審査の上順位を決定する「ZINE AWARD(ジン・アワード)」も同時開催。入選作品は瀬戸内アートブックフェア2021で展示・販売(予定)されます。
ZINEって何?
さてここで、ZINEって何?と思う人もいるでしょう。「ZINE」の読み方は「ジン」。調べると随分前からあるのですが、恥ずかしながら私は今回のイベントで初めてこの言葉を知りました。
自作の文章や絵、写真などをコピー機やプリンターで少量印刷し、ホチキスなどでとじた小冊子。「magazine」(雑誌)が語源とされる。
手軽に自分を表現できる手段として1960年代に米国で生まれ、90年代に西海岸を中心に流行。国内では2009年に東京でイベントが開かれたのを契機に、関心を持つ人が広がっている。
(コトバンク・朝日新聞)
物凄~く簡単に言うと「出版社が介入しない自作の本(冊子)」。インディーズの本というか。「リトルプレス」とはほぼ同義語のようです。
しかしZINE(ジン)には、はっきりとした定義が無いので、「同人誌・ミニコミ・自費出版」とはどう違うのかというと、その辺りは何ともあやふや。
今回私はZINE AWARD授賞式のトークイベントに参加したのですが、そこでもこの話がとりあげられ。
東京のセレクトショップ/出版社「ユトレヒト」のオーナー・岡部さんも「同人誌とどう違うのかと言われると分からない」と話していました。
私が勝手に敬愛しているNEUTRAL COLORS(ニュー・カラー)編集長・加藤直徳さんは「唯一無二であって、大量生産出来ないもの」という風にも仰っていました。そんな加藤さんが選んだ審査員賞は「YOUはなぜ豊島へ」というタイトルで、表紙に使い古しの茶色い紙袋を使用するという、めちゃくちゃ個性的な作品で笑いました。「割れ物注意」とかのシールが貼られていて、正に大量生産出来ないし、する気も無いぜ!というロックなZINE。
実際、ZINE AWARDの応募要項にはこう書かれています。
内容は自由。写真・イラスト・コラム・漫画・小説など、好きなものを本にします。
体裁も自由。原稿をコピーしてホッチキスで閉じるだけでもOK。印刷会社でこだわって作るものOK。
あなたの「好き!」を本にできます。
なので、今回のZINE AWARDに出展されていた作品は、きちんと印刷会社に出して販売できる状態の本になっているものもあれば、家でプリントしてそのままホッチキスで留めたものもあったり、そもそも本になっていなく、箱や瓶に入っていたり、個性豊かな作品ばかりでした。
結局ZINEの基準や捉え方は人それぞれ。
私の中で「ZINE」と「同人誌・ミニコミ・自費出版」は、広義では全て同じで、言い方がオシャレになっただけ、という感じ。
「同人誌」って言うとどうしてもオタク感やマニア感があるけれど、「ZINE(ジン)」や「リトルプレス」って言うと何かオシャレでカッコイイじゃないですか。
まぁ「自費出版」と言うと、もう少し大がかりなイメージになるかな?
全国からZINE AWARDに出展された作品達
全国から集まったZINEは玉藻公園内にある「披雲閣(ひうんかく)」に展示され、来場者が自由に読むことができます。
東京から沖縄、はたまた台湾から送られてきた作品もありました。どの作品が受賞するのか、自分で予想しながら読むのもまた楽しいです。
受賞はされていませんでしたが、個人的はこの「お仕事」というZINEが一番ツボでした。実際には存在しない様々な架空の仕事について描かれた漫画なのですが、そのセンスがすごい。
・免許の更新を嫌がる人を説得する仕事
・道を教えてくれそうな人がいそうな道を教える仕事
・同じ服を着ている人を見つけて、一方を脱がす仕事
まぁ、シュールです。
ZINEの展示場は来場者の数の割に、皆さん本当に真剣に本を読んでいるので非常に静かなのですが、思わず吹き出しました。
販売もされているそうで、インスタからご本人に連絡をとってみると、北浜アリー内にある「BOOK MARUTE(マルテ)」さんで販売されているとのことでした。これは買いに行かないと!
「裏も表も」これも面白かった!人間ドックのあるあるを短歌にするという斬新な作品。人間ドックを受けたことが無い私でもちょっと笑ってしまう。
手のひらに乗るサイズと、2色刷りの色のチョイスも可愛い。イラストの部分はボコボコしていたり、印刷にも凝った作品に愛情を感じられました。
双六や心理テストとかでこれを選んだ人は何番へ、というヤツあるじゃないですか。「デルタストーリー」はそんな感じで自分が登場人物の一人になり、選択肢を選んで読み進めていくゲームブック。ゲームで言うところの、ときメモや弟切草等(古い)のシュミレーションゲームの本バージョンですね。
これも時間があれば全部読みたかったけれど、今回のZINEは約100冊あると聞かされたので、少し読んで先に進みました。
「公園遊具」は実際深夜に公園に行って撮った写真をまとめた写真集。何冊かシリーズになっていて、別のシリーズで受賞されていました。
他にも個性豊かなZINEが沢山。
他にも「そんな個人的なこと書いていいの!?」というマニアックな作品もあって、何だか見てはいけないものを見てしまった罪悪感を感じたりも。
とにかく本当にどの作品も面白くて、午後から行った私は全然時間が足りず、めちゃくちゃ後悔しました。次回は初日の午前中に行こう。で、読みきれなかったら次の日も行こう!
因みに私が目に留まったのはほとんど漫画や写真集。作品の量が多いので、文章系はどうしても後回しにしてしまうんですよね・・・。これは審査員の方も言っていました。ZINE AWARDは一般審査票もあるので、本気で賞を取りに行きたい人は、写真等のアート系や漫画・もしくはサラッと読める短文の方がいいのかもしれません。
私が初めて作ったZINE「かわいい旅ができない」
ZINE AWARDの参加資格はありません。文章を書いたことがないド素人でも小学生でも、誰でも参加できるので、今回私も思い切って応募してみました。本当につい今しがたZINEという言葉を知った私でも、やる気さえあれば出展していいのです!
しかし締切日までに実質3週間も無かったので、まぁまぁ頑張りました。
当日集まった他の作品を見て思ったのですが、常日頃からZINEを作っていてる人が出展している感じで、私のようにイベントを知ってから作り出す人は少なそう。まぁイベント告知も1ヶ月前にするくらいですからね。
旅エッセイなら書けるかなーと書いた「かわいい旅ができない」。タイトルまんまの内容で、女子が「かわいい!」と思うような内容ではありません。※名字は偽名です。
10年以上ぶりに絵も描いてみましたが、画力の無さから完成後に「これ絵が無い方が良かったな・・・」と後悔する始末;でもまぁ売るわけでもないただの自己満足なので、もういいやとそのまま出しました。
紙も文具生活で買ってきた紙で、印刷も家庭用プリンターで家で印刷し、ホッチキスで留めて布張っただけのしょぼい装丁。
だけど作っている時は楽しかったので、実際ZINEを作って売っている人の気持ちも少し分かりました。
自己満足で作ったZINEですが、これを気に入ってくれた琴平町のカフェ・栞やさんがお店に置いてくれているので、一応そこで読めます。というか、販売していないのでそこでしか読めません笑。
YOMSさんのペーパートークに出したミニ版も、フリーペーパーで置いてもらっています♪
瀬戸内アートブックフェアを攻略せよ(まとめ)
瀬戸内アートブックフェアのまとめです。
開催日のインフォメーション
瀬戸内アートブックフェア2020は、情報公開されたのが開催日の約1ヶ月前でした。しかも瀬戸芸のオフィシャルホームページ・ART SETOUCHIで告知されただけで、InstagramやTwitterには何の情報もありませんでした;
いや、いちいちホームページ見に行かんし~と思っていたら、別口でありました。
ホームページはこちら。
しかしこのTwitterは他人のリツイートばかりで、運営側の発信はほぼありません。Instagramも大した情報は発信されないので、「この日に開催される」ということが分かるだけのものと思っておいた方がいいでしょう。
確かに誰が来るとか、詳しい情報はホームページにありますが、イベントを全然知らない人にとっては会場の雰囲気とかどんな作品があるとかも知りたいと思うんですけどね。しかもZINE AWARD授賞式が終わった1週間経っても受賞者がまだHPにも公開されていないって;何なら広報部で雇って欲しい。
ちなみに私は、なタ書・藤井さんのTwitterでこのイベントを知ったので、私のように大した発信をしないアカウントをフォローするのが嫌な方は藤井さんのTwitterをフォローしとけばいいと思います笑。
アクセス・入場料
イベントが開催される玉藻公園へはJR高松駅から徒歩5分。車の場合、入園者専用の無料駐車場もあります。
●イベント自体の入場料は無料ですが、公園等の入場料が必要です。
玉藻公園入場料200円+披雲閣入場料300円=合計500円
披雲閣の中にZINEがあり、トークイベントもその中で行われるのですが、一度出ても再入場できるように手にスタンプを押してくれます。玉藻公園自体から出た場合は、多分もう一度払わないといけないと思います。
出展されているZINEは購入できるの?
ZINE AWARDに出展されているZINEは、現地では購入できません。通常ZINEは配布したり販売目的で作られるものですが、出展している作品は本屋等で販売しているものもあれば、そもそも配布目的がないものもあります。
大体作品の最後のページに作者のSNSアカウントやHPが記載されているので、それを写真にでも撮っておいて後から直接作者にコンタクトを取ってみるといいでしょう。
ちなみに高松中心部辺りでZINEを扱っている本屋さんは、BOOK MARUTE(マルテ)・ヌルガンガ・YOMS(ヨムス)・なタ書。他にもあると思いますが。
出版社・編集社等の展示販売ブース
全国から集まった出版社や編集社、フリーランスの方の展示販売ブースもあるので、2冊購入しました。
私はこの辺りの事前チェックを怠っていたため、勝手に敬愛する加藤さんのNEUTRAL COLORS(ニュー・カラーズ)のブースがあることを当日知り、しかもそこでご本人自ら販売していることを知り、「一番お気に入りのトルコのTRANSIT持って来れば良かった!」と大後悔しながらNEUTRAL COLORSの創刊号を購入し、サインを頂き、手汗脇汗を流しながら握手して頂きました。
後々、一緒に写真撮ってもらえば良かったー!と思ったものの、その時はテンパりすぎて思いもつきませんでした。
ほんで、この雑誌(というよりも、もはやアートブック)NEUTRAL COLORSがまた凄いんだわ・・・。
もぅ語りだすと長くなりそうだから、また別記事で書こうと思います。ただ、とある理由でまだ全て読めていないので記事のUPは遅くなるかも。
もう一冊は、元々Instagramをフォローしていた西山勲さんの写真集「knock」最後の一冊をギリギリGET。
こちらの紹介もまた別記事で書こうかと。
まさかこんな所でアフリカの話で盛り上がれるとは思っていなかったので、嬉しかったです。
ZINEって面白い!
今回の瀬戸内アートブックフェアで思ったことは「ZINEって面白い!」。
審査員の方も仰っていましたが、「誰にも頼まれていないのに勝手に作る、熱量が溢れ出ているものほど面白い」というのは本当にそうだな~と思いました。
「いやいや、そんなこと誰も聞いてないし」と突っ込みを入れたくなる個人的なものほど面白くて。出版社に持って行ったら絶対断られそうなものほど魅力的なんですよね。
ZINEの良さはそういうところにあるのかも。それで儲けたいとかいう考えが無くて、好きなことを好きなように書いて、一部の人に共感してもらえればそれでいいかな、という。
加藤さんが「もっと政治的なものとか、問題作になるようなものがあってもいい」と言っていたので、私の次回作は「海外で出会ったマ◯ファナを食らう人々」にしようかと思います。もちろん伏せ字無しで。
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